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依存気味な女性の恋愛と自立 矢沢あい『Paradise Kiss』書評

矢沢あい『Paradise Kiss』を読み、衝撃を受けた。

恋愛に甘みと苦味があるとして、その苦味の部分を克明に描き出していたからだ。

苦味というのは、例えば片思いの切なさだけではない。

経済的・精神的な自立依存的な恋愛という、一人の女性の人生に関わる問題が現実味を帯びて迫ってくるのだ。

本編に登場する主要キャラクターは全員高校生であり、この漫画が連載されていた雑誌『Zipper』の想定読者も10代後半に設定されている。

従ってジャンルとしては少女漫画であるが、10代の「少女」ではなく、20代以上の「女性」にこそ広く読まれるべきだと感じた。

装丁がオトナっぽい

コミックス1巻が発売されたのは2000年で、本編に登場する携帯はガラケーだ。

最近の漫画ではないが、物語は全く色褪せない。

『Paradise Kiss』でしか味わえない、生々しい心理描写の魅力があるのだ。

少しもネタバレされたくない人は、この記事を読む前に原作を読んで欲しい。

変わったようで変われないヒロインのリアルさ

ヒロインの紫(ゆかり)は、主体性に欠けた女子高生。

有名な進学校に通うが、将来の自分が進むべき道について真剣に考えていなかった。

夜遅くにデートに誘われた時も、自分の意思で付いて行ったのに、ヒーローに甘えたい気持ちからうっかり「相手のせい」にしてしまう。

そのことについて、ヒーローはヒロインを叱り始める。

この時点で、「普通の少女漫画」じゃないことが分かった。

どこの世界に、自分に夢中な乙女に説教をするヒーローがいただろうか?

こういった苦い経験を経て、ヒロインの紫は自分の夢を見つけて努力を始める。

しかし、結局甘えたい心が出てきたり、雰囲気に流されてしまったりして、すぐには変わることができない。ヒロインの葛藤は、最終巻まで続く。

これまで読んできた少女漫画ではヒロインが「変わりたい!」と言った瞬間から自動的に変わっていくシステムだった。

だから、簡単にはうまくいかないリアルさに惹きつけられる。

恋愛とキャリアのバランス感覚を学ぶ

甘えるヒロインに厳しい言葉をかけたヒーロー・譲二には、そうするだけの過去があった。

実は譲二は愛人の子だった。

自分で働く気のない母親は、譲二の父親のお金で高級マンションに暮らしている。

何かと他人のせいにする癖があり、譲二についても本人の前で悪気なく「産まなきゃよかった」と愚痴をこぼす。

そんな母親を見て育った譲二は、他人のせいにする女、自立できない女を好きになれないのだ。

恋愛に依存する譲二の母親とは対照的に、ヒロインの紫は物語の最後で大事なものを捨てて夢を掴む。

譲二の母親の惨めな姿や、最後に大きく成長したヒロインの姿を見て、思わず自分自身の生き方を問い直さずにはいられなかった。

魅力はストーリーだけではない

ファッションが題材なだけに登場人物の服装が凝っていて、見ているだけで楽しめる。

特に扉絵などは、矢沢あいのセンスが爆発していた。

さらに、個人的には実和子という親友ポジションのキャラが好きだった。

天真爛漫でひたすら親切な実和子。ああなれば、自分にも友達ができるかもしれない。

 

少しでも原作が気になったら、ぜひ読んでみて欲しい。

(アマゾンのレビューも案の定、恐ろしく良かった。)

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